百城千世子が勝願ヒロインである理由

『アクタージュ』の百城千世子というキャラは、一言でいえば「勝願(しょうがん)ヒロイン」である。

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〈コミック『アクタージュ』第9巻scene76「勝機」〉より引用©︎TATSUYA MATSUKI.SHIRO USAZAKI/SHUEISHA

 1. 常勝ヒロインとの対極「勝願ヒロイン」

常勝ヒロインは2018年3月に渡辺総研が提唱したキャラクター概念であるが、百城千世子はこの常勝ヒロインとは対極に位置するといっても差し支えない。

 

百城千世子は作中初期では圧倒的な演技力とカリスマ性で主人公の夜凪景を圧倒するが、物語が進むにつれ、少なくとも百城千世子の認識内においては、この立ち位置は逆転する。

百城千世子「造花は生花には勝てない」

週刊少年ジャンプ2020年11号『アクタージュ』scene100「ロードショー」〉より引用

平凡が天才に

造花が生花に

加工された嘘(偶像)がありのままの真実(人間)には勝てない(と百城千世子が思っている)ように、百城千世子が夜凪景に対して強烈な対抗意識を抱くようになる。

 

今まで積み上げてきた役者生命をすべて賭して、夜凪景に挑む百城千世子は、不敵に勝利をつかみ取る常勝ヒロインの範疇には含まれないだろう。だが

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〈コミック『アクタージュ』第9巻scene76「勝機」〉より引用©︎TATSUYA MATSUKI.SHIRO USAZAKI/SHUEISH

だが、勝利を貪欲に追い求める姿勢は、渡辺総研を否応なしに惹きつける。勝利をつかみ取り続けるという意味での〈常勝〉ではなく、勝利を願わずにはいられないという意味での〈勝願〉が、彼女には似つかわしい。